Symphonies 1-9
カラヤン指揮ベルリンフィルによるブルックナーの交響曲全集です。
録音は第1番(1981)、第2番(1980-81)、第3番(1980)、第4番(1975)、
第5番(1976)、第6番(1979)、第7番(1975)、第8番(1975)、第9番
(1975)と約6年にわたっています。このうち、第1番、第2番、第3番、第6番
はおそらく唯一の録音でしょう。つまり、カラヤンが複数回録音しているものは、
ほぼ1975年に録音が集中しているという構図です。
いずれの曲も流れるような演奏が特徴的です。ヴァントのように音楽の大きな塊が
そびえ立つという演奏とは非常に対照的です。カラヤンのブルックナーは評論家
諸氏からほとんど無視され、もしくは貶されているのが実態ですが、なぜ評判が
良くないのかよくわかりません。
カラヤンはバロックから現代音楽まで、ドイツ・オーストリアだけでなくロシア、
北欧・東欧・フランスものまで、小品から大作まで、何でも見事に器用にこなす
力がありました。ヴァント、クナッパーツブッシュ、ヨッフムなどの指揮者達は
ブルックナーを徹底的にそのレパートリーの中心に置き、それ以外のレパートリー
もそれほど広くありませんでした。芸術家の場合どうしても「専門店」的な人ほど
その道のスペシャリストであるように解されがちで、カラヤンのような「百貨店」
的な人は、音楽は一級品であるにもかかわらず器用貧乏に見られて損をしている
ように思えてなりません。
1970年代のカラヤンは最高に充実しており、どの演奏・録音をとっても見事で、
いわゆる「ハズレ」がほとんどありません。このブルックナー録音でも第4番、
第5番、第8番などは流麗・絢爛でありながらそびえ立つようなスケール感も
具備しています。ゴツゴツと大きくそびえ立つのがブルックナーであると思って
いる方は、ぜひこの演奏を聴いてみて下さい。新しい視点・感覚でブルックナー
をとらえ直すことができると思います。
Bruckner: Symphonies 3-9, Te Deum, Mass in F Minor
非常に幸いなことに、私はこのチェリビダッケ&ミュンヘン・フィルの1986年の日本公演を実際にライブで聴いています。
あのときの圧倒的な音楽的感動、あり得ないほど完成された巨大な芸術に度肝を抜かれ打ちのめされたひとりです。
それ以来この指揮者とオケの大ファンを続けてきましたが、こうしたCDを聴くたびにあの時の大きな感動がまざまざと蘇ってきます。
それは本当に稀有な、奇跡のような音楽体験でした。
でも反面、この「チェリビダッケ・エディションVol.1」の解説にも書かれていたように、あの巨大な音楽をCDに取り込むことはそもそも無理がありすぎるのかもしれません。
このCDだけを聴かれた方は、おそらくテンポが遅すぎて全体の構成まで崩れてしまった、我慢しがたい演奏に感じてしまうのではないでしょうか。
私もCDを聴いただけでしたらきっとそう思ってしまっていたでしょう。
それほど、コンサートでの響きとCDでのそれとは明らかな隔たりがあるように思います。
(決してCDの出来がよくないというわけではありません)
あの、コンサートでの
ひとつひとつの音符すべてにあり得ないほど大きな意味を持たせたような圧倒的な響きを実際に聴いてしまうと、こうしたCDは単なる「記録」にしかすぎないような気さえしてしまいます。
いみじくもチェリのご子息チェリビダーケ氏が書かれているように
「写真のアルバムを懐かしく眺めるような」聴き方をすべきなのかもしれません。
(そうすると、音楽CDとしての価値はどうなのか?という問題も生まれてしまいますが・・・)
少なくともひとつだけはっきり言えることは
ここで演奏している誰もが、録音のことなど何一つ考えずに演奏しているという事実です。
その点こそが、このCDの持つ大いなる価値と重大な欠点を要約しているような気がします。
もう二度とライブ演奏を聴くことができないということが
あまりに残念でなりません・・・
フルトヴェングラー・コンプリート RIAS レコーディングズ (Wilhelm Furtwangler - The Complete RIAS Recordings) [12CDs + Bonus CD] (Import CD from Germany)
フルトヴェングラーの全集は、EMIのベートーヴェン全集しか持っていないので、手頃な価格の全集を探して、このBOX SETを見つけました。
購入前は音質に不安が若干ありましたが、評判が非常に良いので思い切って購入したところ、ノイズが巧妙に抑えられ、期待以上の迫力のある音質なので驚きました。
フルトヴェングラー指揮のコンサートに行く夢はかないませんが、これらのCDを聴くことで、フルトヴェングラーの存在が、ぐっと身近に感じられてきます。
フルトヴェングラーのサインをあしらったBOXのデザインも秀逸で、所有する喜びを満たしてくれます。
第9が入っていないのは残念ですが、フルトヴェングラーに関心がある方は、このBOX SETの購入の検討は一考に値すると思います。
ブラームス:交響曲第1番&第2番&第3番&第4番
録音状態も含め、全体の完成度は極めて高い。カラヤンらしい緻密な音楽であると思う。
個人的には第三番の第三、第四楽章が好きだが、残念なのは音の奥行きが不足しているように感じる点だ。
特に第四楽章は、もっと気迫が伝わってくる演奏を聴きたかった。
とはいえ、全集としての完成度ではトップクラスであるので、ブラームス交響曲全集をお求めの方には是非お勧めしたい。
このボリューム、この内容でこの値段というのがうれしい。