中原の虹 第二巻
「光緒帝が玉座に座っていれば、清国を喰い散らかそうとする列強諸国の傀儡として苦しまなくてはいけなくなる」そう考えた結果、光緒帝を幽閉した西太后。光緒帝自身も、幽閉されている真の意味を理解していた。2人をこの世での苦悩から解放しようと一緒に天国に旅立たせるための罪を背負おうとする若き大総官李春雲(通称春児)。しかし、彼の思いを知って「お前はまだ、不幸な目に遭った分受けるべき幸福の帳尻が合っていない。生き別れになっている兄・春雷に再会するまでどんなに辛くても生きなさい」と、最後の命令を下す西太后。やり場のない思いを吐露する春児の為に殉死という形で光緒帝と一緒に自殺する道を選ぶ春児のかつての弟分・蘭琴。
「人が人として、人間らしく生きる」ただそれだけの事が実はいかに難しい事なのかと痛感させられ、涙が溢れてきました。この第2巻では、後に中国近代史の中で大きな役割を果たす2人の少年・宣統帝溥儀と張作霖の息子張学良も登場。次巻以降もとても楽しみです。
西太后の不老術 (新潮選書)
西太后は約半世紀もの間、実質的な政権を握っていたが、死の直前まで政務をこなし、また
晩年にも太りも痩せもせず、髪は黒々として、肌にはシミひとつなかったといわれており、
70歳前後の頃の彼女が40歳以上には見えなかったという証言も残っている。
本書によると、その秘密は漢方にあったという。そもそも漢方は歴代皇帝たちの不老長寿への
あくなき願いから発達してきた。西太后には当時トップレベルの漢方医師陣が
ついており、その処方を記したカルテが残っている。本書では、咸豊帝の側室となってからの
人生を追いながら、西太后に医師陣が施した処方の数々を、そのカルテから解説していく。
西太后の体調の変化に応じて、注意深く処方を変えていく様子が伝わってくるが、
漢方についても基礎的な部分からかなり踏み込んだところまで説明してあり、
夢中で読み終えてしまった。
漢方でいう「不老」とは、老化現象が実年齢より早く起こるのを防ぐことを目的と
しているようで、別に非現実的なアンチエイジング術を説いているわけではないのだが、
「不老」に大切な精神面での在り方なども書かれている。例えば<「恬淡寡欲」(物や
欲に淡白で、明朗闊達なこと)>が「不老」には大事だとあるのだが、西太后がどう考えても
このような在り方とは対極の人生を送っていたにもかかわらず、伝えられて
いるような若々しい容貌や活力を晩年まで保っていたとすれば、それが却って漢方の効力を
現しているようにも感じた。
カルテに記載された体調、症状から、西太后の性格も想像されるのが興味深かった。
ビクビクしたり、不眠だったりもしたようで、<あまり度胸が据わっていないからこそ
他人を攻撃してしまう>人物像が浮かび上がってくる、とある所がとても印象的だった。