伊坂幸太郎選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎005 (講談社文庫)
伊阪幸太郎さんの傑作選を読めるのは嬉しいです。
しかし、あまりにも解説が短すぎる。あの解説ならば、ない方がいいです!!
それぞれの短編への想いがもっと伝わって来たらいいのになぁ。
風の扉 (文春文庫)
近々、文庫新装版が刊行されるようだ。
だから、ストーリーの詳細、特にネタになる部分にはふれないでおくが、著者には珍しい医学ミステリである。
そう言ってしまうと、ネタの半分くらいはバレバレになってしまうのだが。
驚愕の真相には、度肝を抜かれるに違いない。
なんといっても、21世紀の現在でも不可能なことを、昭和の時代にミステリのネタに設定するのだから、まるでSFである。
はたまた、楳図かずおのホラーマンガであろうか。
そう、本作の設定は、いかにもマンガチックなのである。
そして、それをどれだけ許容できるかで、本作が傑作か駄作かの評価が違ってくる。
わたしは当時、大変面白く読んだ。
若い頃なので、許容範囲が広かったのだろうが、多分今でも許容範囲内だろう。
一応の、もっともらしい説明はある。
まるで白土三平忍者マンガの忍術の説明みたいではあるが。
かつて、土曜ワイド劇場でドラマ化されたのを見たことがある。
あの役を故高松英郎が演じていて、妙な迫力と恐怖感を醸し出していた。
私はドラマを先に見てから原作を読んだが、どちらも面白かったといっておこう。
おそらくドラマ版は再び見ることはかなわないと思うが、原作は何度でも読み返せる。
今回の文庫新装版刊行を機会に、もう一度読んでみても良いかと思っている。
その、もっともらしい説明の無理さを、もう一度楽しんでみたい。
腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)
著者は推理小説作家だが、名前は知っていたものの小説は読んだことがなかった。
これは小説ではなく、原因不明の腰痛におそわれ、治癒するまでの闘病記である。
発症し、手当たり次第に効果のありそうな治療法を試し、どれも功を奏せず、絶望的になっていく3年間が前半分。
経済的には恵まれているとはいえ、日常生活もままならない腰痛におそわれ、苦しみぬく記録である。
編集者など、広い情報網を持つ知人が多く、とにかく次々に試しては失望する。
心因性のものだろうと言われるようになったところで、ついに、心身症として治療してくれる医師に出会うのだが、名医と呼ばれるひとが次々に実名で出てくる。第3章のタイトル通り「世に腰痛者と名医は多い」のである。
何しろ、!器質的疾患ではないのだから、腰痛を治す名医では治せないのだ。
自分自身の内面にある原因と向き合い、治癒していくのだが、治療法に不信感を抱いた時のこともそのまま正直に書いてある。
書名の「椅子がこわい」は、文字通り、椅子に腰をかけていると痛みだすということなのだが、実は、椅子に腰掛けることによって引き出される潜在意識がこわいのである。
文章は読みやすい。医学用語なのか、「増悪《ぞうあく》」という語が頻出するのが目をひいた。
親分はイエス様 [DVD]
ヤクザの男たちとキリスト教信仰との接点が意表をつく。単なるヤクザ映画かと思う冒頭の抗争場面のリアルさ。それが、韓国人妻の愛によって人生を新しくやり直すという感動の終結には泣かされる。事実がもたらす所以であろう。渡瀬恒彦の木原勇次よりも、奥田瑛二扮する島俊夫の人物像の方が良く描かれている。
Wの悲劇 新装版 (光文社文庫)
エラリー・クイーンの悲劇シリーズにちなんでこのタイトルになっていますが一切関係性はありません。
内容的には背表紙に書いてある範囲内で言いますと、自分に迫ってきた祖父を孫娘が刺殺してしまうのですが、
家族総出で隠蔽工作を行うというものです。
最初に犯人がわかってしまうのですが、その後の展開が実に滑稽で面白かったです。
2時間枠でテレビで放送されたものはパロディ調でしたが、こちらの原作はシリアスな雰囲気です。
お勧めの作品ですので夏樹静子を知らない方でもぜひ読んでみて下さい。