インストール (河出文庫)
「インストール」
不登校になる理由が曖昧なのも、母親が不登校に気づかないのも、少年の母親に追求されないのも、
説明がないところがかえって現代社会が抱える漠としたきしみのようなものを現わしている気がする。
明確な理由はないけど、なんとなく不満、
なんとなくだるい、なんとなくやる気が出ない。
総じてなんとなく不安というのは、現代人の多くが多かれ少なかれ感じている事だと思う。
最後、不思議なアルバイトから自然と撤退していく二人には、そんな不安な社会の中でも前へ進めるんだよというちょっぴりの希望が感じられて、そこがなんとなくいい。
かわいそうだね?
女性作家によくある独特な言い回しに、新鮮さを感じた。たしかに句読点の入れ方に特徴があり、回りくどい文体になってしまっているが、これが彼女のスタイルと思えば味ではないか。作品については、今を生きるリアルな女性像が、悲しくもたくましくも感じた。ちょっとディープでブラックだけど、後味は爽快。私も強く生きなきゃって思える本。
インストール スタンダード・エディション [DVD]
原作を読んだ時点で「映像化なら上戸彩」と思ってましたが、見事にはまっていました。(特に彼女のファンというわけではないのですが)
原作の持つ、あのとらえどころの無いふわふわとした宙に浮いているかのような感覚を見事に映像化しています。
音楽もマッチング。キャスティングもOK。ただどうしても内容的にも作り的には、若い人向けの映画。いい大人が見て楽しめるような映画ではありません。原作同様同年代の人たち(著者の綿矢りささんなど)が楽しむ今風の青春ムービー(死語だね、こりゃ。笑)でしょう。
初めて神木隆之介くんを知りました。いい味出してますね。とくに漢字の読み間違いに気づいたときの演技は面白かったですね。今後要チェックの子役ですね。
蹴りたい背中 (河出文庫)
クラスで孤立している人がどのような形で(意識面、行動面とも)しのいでいるかはそれぞれだろう。本作の主人公・ハツが選んだ(選ばざるを得なかった)その形について、いい悪い、好き嫌いなどを云々せず、ただひたすら彼女の心情に寄り添うことに徹して読んでみれば、たいそう胸の痛くなる小説だった。
そんな学校生活の中で、ハツが興味をもった一人の男子・にな川。彼もまた孤立しているのだが、熱狂的ファンである「オリチャン」が心を占有しているため、孤立の事実にすら無頓着に見える。
そんなにな川に対し、ハツが抱いた名づけがたい感情を、一見子どもじみた、しかしどのようにも受け取れるふくらみをもつ「蹴りたい」という衝動で表現した手際。実際に蹴るシーンの熱っぽくて濃い独特の空気は、なかなかのものと思う。
目に見えて何が変わるでもないラストは、好みが分かれたことだろう。ハツのクラスでの状況がよくなる見通しは全くなく、にな川も同様。二人の間柄も「蹴る―蹴られる」関係のままである。
彼らのそれからが気がかりで、しばらく尾を引いた・・・どんなふうにであれ、登場人物が長く読者の心に居座り続けるというのも、魅力的な小説の要件のひとつではなかろうか。
インストール コレクターズ・エディション (2枚組) [DVD]
思春期における女子高生のモラトリアムが軽妙に描かれた作品。不登校やひきこもりを引き起こした“軽薄な憂苦”と“優等生的な性”に作為的なあざとさが感じられる。また、これらの結びつきが安直であるので、女子高生の再生再起に迫真力がない。このため、作品から人生や人情の機微を受け取ることはできない。だが、メディアを席巻している上戸彩の演技は鑑賞に値するだろう。