最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか
取り上げられている事故例は本書紹介に詳しいが、
これだけ科学技術が進んだのに、
こんな悲惨な事故が後を絶たない……
ではなくて、科学技術が進んだからこそ、
よりいっそう大きな事故が増えている
と著者は説く。
複雑化したシステムと
巨大化したしたマシンパワーの世界は
著者のいうまさにマシンフロンティアと呼ぶに
ふさわしい場所に違いない。
普段、制御されていると信じ切っているものが
いったん、異常な方向に走り出すと、もう誰に求められないのだ。
どんな事故も、少しのミスから始まっている。
そのミスが想像もできない偶然と重なって大事故になっている。
確率でいえば、どんなに小さくてもそれは起こる。
それは、当たらない宝くじがないのと同じだ。
時間はかかっても、いつかは起こる。
それなのに、過去の教訓を生かせないのが私たちなのだろう。
ここに書かれた教訓の一部でも生かせたら、防げた事故も数多いと思う。
乗客106名が亡くなった尼崎脱線事故もその一つに思う。
非常に学ぶべき点が多い本書だが、
文章だけではわかりにくい点も多く、
読みやすさの点で★3とさせてもらった。
同書を元に、ディスカバリーチャンネルで
シリーズが作られたという。
本書を読む前に、こちらを観た方が理解が早いかもしれない。
油田爆破 (新潮文庫)
オプ・センターシリーズの7作目。
目を引くのは、テロリスト「ハープナー」の見事な描写。その描写が、ハープナーの存在感を引き立たせ、物語のアクセントとなっています。
一方で、その他のキャラは非力。物語もどことなく軽いです。ただ、キャラと物語の重さの相性がいいのか、サクサク読み進めて一定の読後感は味わえる作品です。
ストームウォッチ~北海油田の謎(紙ジャケット仕様)
ジェスロ・タルの12th。1979作邦題は「北海油田の謎」。
今回はイアン・アンダーソン船長が北海油田を探しにゆくというストーリーもので、
当時すでに問題になりだしていた天然資源、環境問題などへの警鐘的な色合いもある。
サウンドの方は、これまでのトラッドロックとしての本質はそのままに、
よりドラマ性を感じさせるメリハリがあって、全体的にも濃密な作品となっている。
楽曲によって愉快なフルートの音色や、叙情的なオーケストラアレンジなども聴かせてくれ
バンドとしてのスケールの大さを示した、中期タルの集大成的なアルバムと言ってもよい。
プーチンのエネルギー戦略
ロシアの石油・天然ガス会社のガスプロムは、今ではメジャー以上に力があるエネルギー企業になっている。週刊誌には、「ガスプロムが東京電力を買収する日」というような記事が掲載されるくらいだ。
何より、近年、日米の企業が合弁で進めていたサハリン2という石油・ガス資源開発プロジェクトが、環境問題を理由にストップがかけられ、ガスプロムの傘下となったという、日本人にとってはくやしい気持ちになる出来事があったばかりだ
けれども、ロシアの企業ということがあって、正直なところ、どんな企業なのかよくわからなかった。
この本を読むと、ガスプロムをめぐるもやもや感がすっきりする。そもそも、プーチン大統領はエネルギーを武器に世界に対して強いプレゼンスを示そうとしており、ガスプロムはそのための「プーチンの会社」だという。そうした戦略の中で、サハリン2を傘下に収め、シベリアパイプラインでは日本と中国をはかりにかける(日本は政府と民間が共同歩調をとってエネルギーの国際交渉をしないために、ちぐはぐな対応しかできていないという弱みもある)。つまり、プーチン=ガスプロムの政策が理解できるだけでも、大きな収穫がある本だ。
また、2006年にウクライナへのガス供給がストップした事件があった。もちろん、ロシアから離れていくウクライナに対する嫌がらせだったのだが、このことがかえって、ロシアがEUを敵に回すということにもつながっている。つまりプーチンとしては失敗した戦略だったということだ。この記述には少し溜飲も下がる。
もっとも、原油価格の上昇で経済状況が良くなっているというロシアだが、産業が育っていないために、富は人々に行き渡っていないという。このあたりがロシアの弱みだろう。
とはいえ、個人的には、大国であり無視できないロシアと付き合っていくことは必要だと思っているし、それは政府だけではなく民間も同じだと思う。その意味でも、ロシアを知ることは重要だし、この本は貴重な情報を分析して示してくれている。エネルギーの将来を考える上でも、とても役に立った。
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド [DVD]
感情移入など出来る作品ではない。これをみて主人公に共感する奴は危険である。されどそうなる者は非常に多そうだ。それがこの現代社会の姿だと思う。最後の主人公の台詞は掛詞になっている。しかし現代ではこれで終わらない、続くのだ。だから恐ろしい。
時代は変われど人の心は変わらない。それを如実に表現している作品だと思う。日本、アメリカ、それ以外の国々でも、人の命より優先するものがある。
金と権力。酒、薬、ギャンブル、女。どれも飲まれてはいけないものだが飲まれていく男達。女も現代では同様であろう。己のみが破壊されるならばまだ許される、自業自得という言葉で。しかし初めの2項目は周りの全てをも飲み込んでいく。真っ赤な血に染めながら・・・
恐怖を感じると言うより、余りにも人間の情けなさを感じさせる作品だった。