吸血鬼ノスフェラトゥ [DVD]
15世紀半ば、ワラキア公国(現在のルーマニアの一角)ブラン城。
父子二代にわたり、Draculea(龍の意味)の英雄尊称で呼ばれた城主Vladは、オスマントルコと戦い、多くの敵兵を串刺しにして丘に並べたため、Tepes(串刺し公)とも呼ばれた。
トランシルバニア(公国もあった)で総称されるこの地方は、西欧から見れば、遙か彼方にある魔境。
狂犬病に感染していたオオカミと吸血コウモリが、人を噛んだときに発病する様を見て「Nosferatou」という吸血鬼伝説も伝えられていた。
ブラフ・シュトーカーは、これらを下敷きに「吸血鬼ドラキュラ」を書いたが、ムルナウが「吸血鬼ノスフェラトゥ」として、初めて映画化した。
西欧人が初めて描いた吸血鬼で、原点のすさまじさがある。
吸血鬼ノスフェラトゥ 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]
吸血鬼映画として超個性的なインパクトが強い。
吸血鬼の造型が奇怪で不気味で凄まじい。
吸血鬼の役者の怪演振りが半端じゃなくオゾマシイ。
吸血鬼物としてこれを上回るゴシック・ホラーは未だに出ていない。
「魔人ドラキュラ」(30)、「吸血鬼ドラキュラ」(57)も傑作ですが、個人的にはやはり本作の魅力には勝てない。兎に角 恐怖感、緊迫感、ゲテ物感、気色悪さ、そして滑稽な妖しい雰囲気感さえ(特に棺桶を抱えてうろつく姿が最高!)醸し出す演出効果が圧巻で他を寄せ付けないのだ。
リメイク版「ノスフェラトゥ」(78)も頑張っている(キンスキーとアジャーニの好演、秀作。)が本作には届かない。
吸血鬼ノスフェラトゥ 新訳版 [DVD]
いろいろな役者が吸血鬼を演じてきましたが、本作の吸血鬼は群を抜いて怖ろしい。棺桶から起きあがって徘徊するシーンなどは、夜中にひとりじゃ見ない方がいいでしょう。戦前のドイツ映画の水準を示す名作中の名作です。恐怖映画に関心のない人も、ドイツ的映像美をいやと言うほど堪能することができます。
なにしろ古い映画ですから、画質はこんなものでしょう。そんなに悪くはないと思います。字幕はオンオフが可能です。
吸血鬼ノスフェラートゥ 恐怖の交響曲 (F.W.ムルナウ コレクション/クリティカル・エディション) [DVD]
今まで流通していた『吸血鬼ノスフェラトゥ』の画質のレベル、また、DVDを名乗りながら、しかも大手の会社でいまいち綺麗じゃないなあという気合の入ってないDVDの画質と比べれば、HD-リマスターを名乗ってもいいぐらいのレベルです。
自分は2000年代初頭にBS2衛星映画劇場で、おどろおどろしくどよーんとした音楽と弁士の音声入りで見たので、本DVDの音楽等に最初は違和感がありましたが、これはこれでイイ!
クラシック音楽やディズニー古典映画を見るような感覚で、芸術的に、まったりと堪能することが出来ます。
圧倒的に映像がクリアに、そして傷がなくなったせいで気付いただけかもしれませんが、「あれっ?こんな場面あったっけ?」とBS2で鑑賞した時には気付かなかったような場面も所々ありました。
私の記憶では滞在初日の夜が明けると首に傷跡があったような気がしていたんですが、初日にはなんともなく、フッターは普通に朝を堪能し、郵便を頼むが黙って通り過ぎられ、不安がよぎる、といった場面になっていました。
気のせいの可能性もありますが、他にも見たことのない場面があり、ゆったりとした印象(コマスピードも公開当時に近い形に操作してある)を受けます(完全版と書いた所以です)。
ノスフェラトゥ(マックス・シュレック)の顔も「ああ、こういう顔なのね」とじっくり観察することが出来ます。
テレビに超接近して見ても、鑑賞に堪えうるぐらい綺麗にデジタル補正されています。
表記だと分かりづらいですが、特典映像にF・W・ムルナウの半生とノスフェラトゥ誕生の経緯を綴ったメイキング・ドキュメンタリーが収録されています。
これを見ると、ノスフェラトゥの城等々、登場する印象的な風景が実際にはどういう場所なのかはっきりして、長年の謎(?)が解ける方も多いと思います。
条例を定めているヨーロッパなだけあって景観はそれほど今も変化していないんです。
元値(5670円)だとあまりに高いな、と思いますが、amazon価格でこれなら全然買いだと思います。
無声映画が本当の意味でデジタルになったらどういう映像になるのかぜひ、お確かめください。
ノスフェラトゥ [DVD]
ヘルツォークを初めてみたのは、ミニシアター上映の「カスパーハウザーの謎」。
やがて東京でミニブーム。「フィツカラルド」の、船で山を越えるという大仕掛けの、
あまりに気宇壮大でドンキホーテ的な作りにただただ恐れ入り、次に見た「アギーレ神の怒り」で、
キンスキーの神がかり的な怪物ぶりに驚愕する。
そして、憑依女優アジャー二が、寡黙な薄幸の美女になりきる「ノスフェラトゥ」。
繊細な映像美など吹っ飛んでしまうような、骨太な作品題材で強引に引っ張っていく
演出の目立った前作に比べ、この「ノスフェラトゥ」の古い絵画を見るような映像の、
なんと妖しく官能的で戦慄的なこと!
キンスキー演ずる吸血鬼の、貴族の末裔的な高貴さと退廃、そして死と不滅の
あいだを行き交う危うい美しさ。美女を前にして恥じ入る男としての弱さ。
なお、この映画の重苦しくも美しい、異様な雰囲気を醸し出すのに貢献しているのは、
ポポルブーの、シンセサウンドであろう。ダークで秘教的な音楽につい引き込まれてしまう。