バルトーク:ピアノ作品集
【コチシュの奇跡】
コチシュの演奏はスピード感ある流麗な音楽です。吹き渡る風のようにスリリングで洗練の極みだと
思います。ジャッケット写真のような凛々しい22歳の若者が演奏したなんて,奇跡のように思います。
【ハンガリーの演奏家】
バルトークの民謡を題材としたピアノ作品集には,名演が幾枚かあります。まず,このゾルタン・コチシュ。
そして,リリー・クラウスとアンドラーシュ・シフです。コチシュを初め3人ともハンガリーの人なんですね。
これらの曲集はハンガリーの人が必ず通る道なのでしょう。
クラウスはバルトークから直接教えを受けた人で,他の2人より50歳年上,70代後半の録音。コチシュと
シフは20代の録音。
クラウスとシフは,やや民謡風な色合いを漂わせた演奏。もちろん飛び抜けた名演です。好みの問題で
しょうが,私はコチシュが好きです。
【人気のバルトーク】
バルトークは昔は現代音楽の難しい作曲家でした。今では結構な難曲も中学高校吹奏楽の定番になりました。
ピアノ発表会ではルーマニアでしょうか。親しみやすい曲に小さいうちから触れられる時代になったのですね。
【Blu-spec CD】---(普通のプレーヤーでかけられます)
本CDはソニー・ミュージックの高音質CDだそうです。このCDと元からの普通のCDとをそれぞれリッピングして
(AIFF)聞き比べてみました。ネットオーディオ,イヤホンで試聴しました。結論から言うと,大きな差は認め
られませんでした。SN比が高く,艶っぽい音に聞こえましたが、プラシーボ効果かも知れません。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
コチシュは、とにかくうまい。ここでうまいと言うのは、技巧が際立っているということだ。そういう演奏が嫌いな方がいるとは思うが、私は聴いていて感心してしまった。特にピアノ協奏曲第2番の速さは凄い。よくあの難曲を猛スピードで弾けるものだ。一度聴いてみて頂きたい。
ドビュッシー:ピアノ名曲集
ゾルタン・コチシュと言えば、評者にはいまだにアンドラーシュ・シフ、デジュ・ラーンキとの「ハンガリアン・ピアニスト三羽烏」と称された頃の印象にとどまっている。とてもよいリスナーとは言えないが、このたび久しぶりに聴いてみた。それもこれも、実はハンガリーの指揮者イヴァン・フィッシャーの伴奏によるラヴェルのピアノ協奏曲のソリストだったからだ。
本ディスクについても、ラヴェル同曲や『ベルガマスク』全曲とカップリングされた輸入盤で聴取した。もともと、「三羽烏」ではラーンキを最も評価していたから(特にベートーヴェンのチェロ・ソナタの伴奏)、コチシュはシフよりも親しみがない。
で、このドビュッシー、ラヴェルはどうか。前者の演奏、特に『前奏曲』にはミケランジェリやヴェデルニコフといった大物の演奏もあるが、これは優にセカンドチョイスの存在感があると思われる。つまり、ドビュッシーのピアノ作品をまとめて聴く場合、必然的にファーストチョイスということにもなる。
高級感のあるタッチ、機械的に流すところのない滋味、クリアな構造の表出、いずれもドビュッシーの音楽よさが直截的に伝わってくる。曖昧模糊とした「印象派風な」演奏も沢山あるが、コチシュの演奏は、そういう行き方とは異なっている。明晰。かつ潤いにも欠けていない。
ラヴェルの協奏曲はやや落ちる。とは言え、アルゲリッチ盤と比べるからそうなるのか?
伴奏のブダペスト祝祭管弦楽団とフィッシャー指揮のラヴェルは意外な気がするが、こちらは流石に上手い。
第1楽章は、しきりにアルゲリッチの自由奔放な活力が想起されて不満だが、第2楽章はコチシュもよい。フィナーレまで一貫して聴かせるのがフィッシャーである。いつもの濃厚さのななかにも、スタイリッシュなセンスのよさを感じる。
もっともラヴェルは輸入盤にしか入っていないようなので、個人的には国内盤より輸入盤がお奨めだ。