芭蕉俳句集 (岩波文庫)
本書は芭蕉の作と明らかに認められる発句を制作年次順に配列している。927句最終句は「病中吟」三句ではなく、年次不詳等も含め、「別ればや笠手に提て夏羽織」
参考として存疑の部576句、その中には金比羅裏参道の芭蕉句碑「花の陰硯にかはる丸瓦」も含まれている。誤伝と明らかにされている発句も初句の五十音順で付け加えている。「おくのほそ道」で曾良の句としている「かさねとは八重撫子の名成べし」もここ誤伝の部208句に入れている。芭蕉の代作と説が多く、その可能性が強いと言われているので、存疑の部に入れるのがいいのかもしれない。
芭蕉発句集編纂には二つの場合が考えられる。一つは門人たちが芭蕉追慕の意をもって遺詠を蒐集しようとする場合、他は蕉風の亀鑑として作句上の粉本とする場合である。また、鑑賞を目的として編まれる場合は、注釈書の形をとっている。その間に存疑・誤伝が混入するのは避けがたい。本書はそれをさび分けようとする芭蕉俳句(発句)集成の貴重なテキストである。
蕪村俳句集 (岩波文庫)
気のせいか、蕪村の句には、漢数字を織り込んだ句が多い。
みじか夜や六里の松に更たらず
さみだれや大河を前に家二軒
飛び石も三ツ四ツ蓮のうき葉哉
蓮の香や水をはなるゝ茎二寸
ゆふだちや筆もかはかず一千言
こがらしや何に世わたる家五軒
蕪村の句には、おどろきがある。
斧入て香におどろくや冬こだち
短夜や金も落とさぬ狐つき
やどり木の目を覚したる若葉かな
稲かれば小草に秋の日当る
風吹ぬ夜はもの凄き柳かな
目前をむかしに見する時雨哉
化さうな傘かす寺の時雨かな
蕪村の句には、色のパワーがある。
ころもがへ塵打払ふ朱の沓
目にうれし恋君の扇真白なる
蕪村 (岩波新書)
蕪村のお墓を京都で見て、芭蕉への憧憬を蕪村伯が書かれた奥の細道写本で見ました。
そのお寺、金福寺の美しく静かだったこと・・・
蕪村伯の絵を銀閣寺でも拝見しました。むしょうに蕪村伯に憧れ初めて買った1冊目です。
またこの本をもって金福寺にいってみたいです
恋しぐれ
葉室麟の短編小説集を初めて読みました。この作家の
長編小説はモチーフが横に拡がり、しかもどこも内容が
濃いので息がつけずわたしは苦手でした。それに対しこ
の短編集は起承転結がはっきりし、適度にアクセントの
強弱がついてなじみやすくとてもよかったです。
内容は、与謝野蕪村の遺した俳句をヒントに彼と友人
の円山応挙、そして蕪村の家族や弟子達の出来事を創
作したものです。著者の想像力と洞察力が短編という形
式にまとまり、読み応えがあります。蕪村と応挙の老いら
くの恋の行方や弟子の大魯の粗暴の顛末、どれもひとす
じ縄でいかぬ我執のあり様を、さりげない筆で書き切り深
い味わい(見返しに和紙を使った装丁も見事です。)があ
りました。
ここでは、応挙に弟子入りした夫婦の意外な結末を綴
った「牡丹散る」の悼尾を飾った句を掲げておきましょう。
牡丹散てうちかさなりぬ二三片