THE SOCIAL NETWORK
デヴィッド・フィンチャー監督『ソーシャル・ネットワーク』のサントラ。
作曲はナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー。
ナイン・インチ・ネイルズのほかの楽曲がそうであるように
このサントラに収録されている全19曲のうち5曲が、劣化なしの音源で丸々
サントラ公式ホームページから無料でダウンロードできるので、
その関係で、このCDの価格は低めに設定されています。
このCDのほかにもアメリカ本国では、ダウンロード版、5.1チャンネルBlu-ray版と
いろいろな種類のサントラが発売されています。
5.1チャンネルBlu-ray版も魅力的ですが、サントラとして聴くぶんには
CD版のほうが手軽でオススメです。
肝心の音楽については、
予告編で使われているScala & Kolacny Brothersバージョンの“Creep”が
いい感じの雰囲気で、あの雰囲気を期待してこのサントラを買った人は
トレント・レズナーの楽曲に、ちょっとショックを受けるかもしれません・・・。
Closure [VHS] [Import]
悲しく、美しく、冷たく、刹那、憂鬱、混沌、殺伐、残虐、自閉・・・すべての言葉が当てはまり、そしてどの言葉にも似つかない唯一無根の映像美。
正に完全薬物(パーフェクト ドラック)
Downward Spiral
私はこのアルバムをほぼリアルタイムできいていたが、ありとあらゆる意味で90年代の象徴のようなアルバムだと思う。ポストグランジに相応しいgenerationX剥き出しの無気力と耽美主義、美青年(当時)、尾崎豊のような思春期丸出しの青臭い詩、生楽器よりもテクノロジー主体の所謂インダストリアルの主催者、アンビエントやブレイクビーツの導入、90年代アメリカのプログレ、衝動的だとおもわれやすい激しいノイズ音列の裏に働くクラシックピアニストくずれらしい巧緻な計算、それに負けないキャッチーなメロディー、後によくもわるくも一世を風靡するラップメタル勢からの異様なリスペクト、ヒップホップの導入の早さ、プレレディオヘッド、確固たるnine inch nails soundの確立、トータルアルバム主義、無数のフォロワーからの屹立。紛れもなく90年代アメリカのロックを代表するアルバムだと思う。ただ個人的にはよりメロウで、キャッチーで抑揚のきいた黒人よりの次作the fragileのほうが色彩豊かで好きであるし、上だと思う。今作品はやや単調にきこえる。
Girl With the Dragon Tattoo
最初のLed Zeppelinの「Immigrant Song」からして、トレント節が炸裂。
最近ではU2のトリビュートアルバムで、Zoo Stationをカヴァーしていたが、
そちらはどちらかと言うとNINの”静の側面”が打ち出されたカヴァーだった。
こちらはNINの”動の側面”が打ち出された出来と言えると思う。ひたすらノイジーでアグレッシブでテンションが上がる。
最近の静かな雰囲気の曲も独特の趣があっていいが、久々にアグレッシブなトレントの曲を聴けたのは普通に嬉しい。
Disc1の#9 A Thousand Detailsや、Disc2の#3 An Itchもなかなかノイジーでカッコいい。
いくら円熟しても、こういう曲をまだ作ろうと思えば作れてしまうのが、トレントの凄いところ。
もちろん他のインストゥルメンタルも素晴らしい。ピアノや弦楽器、ガムランによるメロディーが凍てついた雰囲気を醸し出し、
アティカスのアンビエントなギターや、Swarmatron(最近のトレントのお気に入りと思われる)の音が、それに絶妙に絡む。
氷と雪の国スウェーデンを舞台としたサスペンスに、非常に合致した音楽だと思う。
前作のSocial Networkより、さらに陰湿かつ深淵。サントラとしても、純粋な音楽としても非常に完成度が高い。
ぜひCDでステレオで聞いてもらいたい。
ちなみに、今回の映画の主題歌である「Immigrant Song」と「Is Your Love Strong Enough?」は、
どちらもフィンチャー監督による選曲らしい。(Karen Oの起用もフィンチャーの推薦だそうな)
やはり、いくら音楽家の技量が優れていようと、監督のヴィジョンやセンスと合っていなければ意味が無い。
スピルバーグにはジョン・ウィリアムズ。ティム・バートンにはダニー・エルフマン……といったように、
フィンチャーとトレント&アティカスも、映画界の黄金コンビとなりそうな予感がする。