エリザベス朝のヴァージナル音楽名曲選
―「真の音楽とはこのことである。一音で衝撃が走り、次の瞬間には感涙するだろう。」
決してこの表現は誇大ではない。グールドによるウィリアム・バード(William Byrd,1540年?–1623年)「セリンジャーのラウンド」の演奏は至高の名演である。
小賢しい演奏論や音楽論を超えた説得力で現代の我々に語りかけ、その究竟の演奏に触れる幸せを噛みしめることが出来る。
フェルメールとデルフトの巨匠たち
B4サイズの大型本です。
編集とADは、『万葉集』『金魚』『KATACHI』などの
ユニークなビジュアル本を連続出版している高岡一弥氏。
図版は、折り込まれた見開き(B3)サイズの紙に印刷されている。
それを一枚一枚、開いていくので、絵との独特の出会い方が楽しめる。
文字はとても少なく、それが白地の紙に端正に置かれている。
つまり、見るものは、ほとんど白地の世界をまず目にして、
その裏にある、絵画に導かれていく。
ページを開く(そこに絵画はない)。
折り畳まれた紙を開ける。
絵画と出会う。
この一連の動作。
最初に絵が見えないことが、
この本を、美術館的空間にしている。
絵画と絵画の間を歩く、静謐なインターバルの時間と空間は、
30数点しか作品が残されていない
謎めいた画家にふさわしいしつらえ。
冒頭のフェルメールの3作品には、部分に寄ったページもあるので、
作品にぐっと近づいて見る体験・効果も味わえる。
ただ残念なのは、この本が、今回のフェルメール展に際して作られたのに、
掲載作品が展示公開作品7点すべてではないこと
(今回の展示で最も素晴らしい『手紙を書く婦人と召使い』の代わりに、
かれの代表作のひとつ『絵画芸術』が収められている)。
絵画掲載点数は、全部で22点。
フェルメール以外の画家の絵のセレクトにも
やや疑問が残る。
テキストは巻末に2本。高橋睦郎と浅田彰。
これらはそれほど刺激的でも深くもなく
収められた絵画作品とゆたかに響きあう結果には、
残念ながらなっていない。
うつろな瞳 (Eyes Look No More) [注意:この商品はPC-AUDIO用ディスクです。通常のプレイヤーでは再生できません。] [STEREO-WAV/PC-AUDIO]
PCからデータファイルをKORG MR-2000SのHDDにコピーして再生。そのアナログ出力を自分のふだん聴いているシステムで再生した。
特筆すべきはその実在感と自然な響き。立体的な残響でリバーブなどの電気的処理のない自然な音響であることがすぐに実感できる。ほのかなチェンバロやヴァージナルはやや後ろで控えめだがとても自然。ナマを聴いたことのない人にはもの足りないと思うかも知れない。
ブロックフレーテの音も、豊かでよく通る。響きが透明なのでまといつくような共ざつ音がなくとても清らかな音がする。ブレスや気配音は、確かな実在感を感じさせるが決して目立つものではない。
MR-2000S付属ソフトで44KHz/16BitにダウンしCDRに焼いてCDPで聴いてみると、解像度が落ちるというより響きにもやっとしたかすかな付帯音がまとわりつくような感じがする。レコーダーの音色もかすかに唾がまじった感じになり、チェンバロも少しうるさくなる。ヴィオラダガンバの響きは張り出してきてきれい。こういうところがオーディオ的には面白い。
特に、ヘッドフォンなどは歴然と選ぶようになるし、WAVファイルからiPodで聴くと、かえってCDPより鮮明な音を楽しめるというところもオーディオのあだのようなもの。アンプの解像度、SN、トランジェント(「立ち上がり」より「立ち下がり」)、スピーカーの位相特性などの基本性能が厳しく問われるだろう。
選曲も演奏も素晴らしい。ふだんからは聞けるようなプログラムではないのだが、表題曲を始めいずれも名曲ぞろいで、すぐにこういう時代の音楽の虜になるだろう。