禅と浄土教 (講談社学術文庫)
第1章から第5章までほぼ同じ内容が書かれているので、どの章から読んでもいいし、1章読めばおよその内容が分る。要は、学と行の徹底と批判精神に尽きる。聖道門は自力難行、浄土門は他力易行という思想から歩み寄る方途はないのだろうか? 大局から見れば、いずれも大乗仏教という一つの流れなのだから、その両者は互いにその一面にすぎない。何も聖道門は聖道門、淨土門は淨土門と本来峻別対立するものではないはず。檀家制度の硬直化によって両門が制度的に歩み寄ることは簡単ではない。教学のほうでいくら双修といっても制度的に変らない限り無理筋だろう。
人間の精神には弱い面と強い面がある。禅は強みに訴える。批判、懐疑精神、自己鍛錬、厳しい自制心と公案などの言語的表現能力など創造性や克己力、真の自己の発見を目指す。弱みに訴えるのは浄土教に相応しい。人間の弱い面を赤裸々に曝け出し、ただただ他力の阿弥陀仏におすがりする。思議というものをしない。はからいをしない。もちろんそこにも学と行はあるにはある。懐疑し思議する弱さを糧とした強さか、徹底的に開き直った弱さを糧とした強さか。自己への執着か放下か。人間の弱さを徹底的に追究した本覚思想は現状の肯定、是認に傾き、自己批判や反省の契機を一切奪ってしまうことによって、信の深化を妨げてしまう嫌いがある。ここに批判精神を期待することは難しい。しかしもともと、仏陀は人間の強さと弱さを同時に見つめていたのではなかったか?
一遍や親鸞や鈴木正三は双修の意図にかかわりなく、結果的に禅と淨を具現した天才的宗教家であった。互いに足りないものを求め、己の宗教思想の実践に血肉させて行く、凡夫には及びもつかない洞察と情熱と創造性があったとみるべきだ。そうした道は常に隘路でかつ峻険なのである。
小説 ドラゴンクエストVII 1少年、世界を開き (GAME NOVELS)
DQ7ってこんなに面白かったっけ?これが第一の感想です。ゲーム中ではさらっと流れてしまっていたイベントシーンも、そのときの感情や心情の変化を実に上手く表現されています。また、イラストがこのゲームのあたたかいイメージにとてもあっていると思います。
原作とは異なる部分ももちろん多々ありますが、ストーリーは原作以上に面白いと感じました。原作があまり好きではないという人にもぜひ読んでもらいたいです。
ザ・ベスト・オブ・ロジェー・ワーグナー合唱団 イン・デジタル
音楽の時間に聞いたり歌ったりした”懐かしい”曲を再び耳にすることができます。
子供の頃とは違った想いで聞くことになるでしょう。
毎日のように新しい曲が生まれて私達を刺激しますが、口ずさんでいるのは昔覚えた曲のようです。
懐かしく、古く、そして新しい。
良い歌は、何の装飾も必要ない、のですね。
故郷を離るる歌~翻訳唱歌集
日本の歌の中には、かなりの数の翻訳歌曲があります。文語調のものなど元々日本の歌かと思うのものもありますが、違和感なく聴けるのは、正しく翻訳の素晴らしさにあるのでしょう。本CDは、改めて、その名歌名唱を楽しめるアルバムです。異色のチェンバロ伴奏も素朴で良いと思います。
金髪のジェニー(ザ・ベスト・オブ・ロジェー・ワーグナー合唱団)
その昔、ソ連の合唱団といえば赤軍合唱団、アメリカ合衆国の合唱団といえばここでした。英語による歌曲を中心にした名曲集です。録音自体は古いのですが、デジタル・リマスタリングであまり古さを感じさせません。演奏形式も無伴奏、ピアノ付き、管弦楽付きとさまざまで飽きさせません。歌唱法もそれらに合わせて微妙に調整されています。
ただ、今の日本でこのような合唱が受けるかというと疑問です。中学・高校の合唱部が合唱人口の多くを占めているのだろうと思いますが、中ルネ、北欧・東欧、日本の現代曲中心に歌っているそれら合唱団員から見ると、ビブラート過多で粗い合唱に聞こえ、「名曲」自体古くさく感じるのではないかと思います。
ホーソンの「希望のささやき」を原詩で聞くことはほとんどないのでなかなか興味深かったのですが、この曲を懐かしく思う世代とともに、このような合唱も消えて行くのでしょうね。