「命」を賭した女の闘いおすすめ度
★★★★★
この本を読んでみて、いかにこの「薬害C型肝炎」の問題を知った積もりになっていたかを思い知りました。
それなりに関心を持って、この問題の報道に注意していた積もりだったのですが、第5章もほとんど知らず、知っていたのは最後の第6章の部分だけでした。
結局は、「418人リスト」が出て、世論が大騒ぎを始めてからでした。
従って、ここに登場する原告の人たちが、5年間と言う長い間、「命」を担保として戦い続けた苦しみは全く知らなかったということです。
それでなくとも医療関係の訴訟は難しく、なかなかその責任を追及する手だてがありません。
今回は、それに加えて「官僚の壁」です。
ここに立ちあがった女性たちの強さをしみじみ感じました。
この本を読んでいる間にどれだけ涙を流したでしょう。
書かれている文章自体は、決して上手いとは思いません。
しかし、そこには「真実」の持つ強みがあります。
そうした彼女たちの苦しみに裏打ちされた強い思いが、世論を、国を動かしたのでしょう。
それにしても、官僚の怠慢にはほとほと嫌気が差します。
それに、与党の「族議員」にも。
何回、同じ事を繰り返せばいいのでしょう。
いつになったら、本当の意味の官僚制度の弊害を無くす「改革」が行われるのでしょうか。
「薬害C型肝炎」とはなにか この一冊でわかるおすすめ度
★★★★★
C型肝炎は、サリドマイド・スモン・HIVなどとくらべ、あまりにも身近な病気だから、かえって「薬害」であることが実感されにくい。
国内で年間3万人がウイルス性肝炎で亡くなっているという。「エイズ治療の技術が進み、エイズではなくC型肝炎で亡くなる血友病患者が急増していた」ことも驚きだ。
テレビや新聞で報道されているわりには本質がわかりにくい問題に、丁寧に答えている。
C型肝炎訴訟についてはいくつか本が出ているが、これが一番おすすめです。
「命の大切さを、命がけで証明した人間たちの魂の書!」
おすすめ度 ★★★★★
出産という新しい命が誕生する現場で起こったまさかの出来事。
「薬害C 型肝炎」の被害者である女性たちの身の上に起きたことは、
出産を経験したことのある女性なら、家族なら、とても他人ごととは思えないだろう。
本書を手にした時、そうした戦慄を覚えながらも一気に惹き込まれて読ませて頂いた。
本の構成の巧さもさることながら、被害に遭われた女性たちの人間性や背景、その時々の
心情をまるで一人一人の息遣が聞こえてくるほどに丁寧に繊細に描写されていることに
胸が打たれた。
また、今回の事件を勝利へと導いた動因が、女性たちはじめ、支援する家族、弁護士、
支える会のメンバーたち、医師、政治家、ジャーナリストなど、みんなの強い正義感、
使命感、勇気、まごころ、愛であったこともよく伝わってきた。
こうした当たり前の人間としての心が国をも動すのだということに安堵する一方、
かけがえのない命や人の幸せ家族の幸せというものがお金や権力より大切であると
いうことを証明しなければならない世の中とはいったいどんな世の中に生きている
のだろうと思う。
命を生み育む女たちの、母として、女として、人間としての魂の叫びが正義という光を
もたらしたことの功績は大きいが、生命を賭してまで闘わざるを得なかった思いに胸が痛む。
本書は、命の重さを自分のこととして考えるのにふさわしい良書である。
著者の誠実さと真心に敬服する。