寒椿 (新潮文庫)
高知の芸奴子方屋に育った芸奴達の生涯を描いた作品。
宮尾登美子お得意のテーマで、決して悪い作品ではないのですが、
綾子シリーズ(櫂、朱夏、春燈、仁淀川)
のようにどんどん先を読みたくなる力作とは思えず、マンネリ感がありました。
オムニバス形式ですので短編集として気軽に読みたい方には良いかも知れませんが、
一般には、まず綾子シリーズをオススメします。
寒椿 [DVD]
西田の男らしさが爆発する映画。
お互いに愛しながら、南野(牡丹)に愛を打ち明けられながら、どうにもならない恋をあきらめさせ、彼女に横恋慕する高島(仁王山)のために戦う男を見事に演じている。複雑な思いを秘めて悪と戦う西田の演技が冴える。
ラスト近くの決闘シーンに感動し、その後かれらが姿を消したという「ナレーション」にこの劇の語ろうとする真意を知った。
正に降旗康男の世界である。
南野(牡丹)のはかない美しさと西田(岩伍)の精悍さがいつまでも忘れられない。
弱いと思った父(岩田)に対して次第にその生き方を理解し尊敬を深める小学生の息子健太郎との愛情の交流も素晴らしい。
昭和初期の遊郭の様子を見られるのも興味深い。
一見、暴力中心にとれるが、原作宮尾の小説から構成しているが、画面で時代背景を知るのに貴重ではないか。
私にはかなり参考になる面があった。なお岩伍と仁王山が急に協力するクライマックスが、二人の関係の経過では唐突。もうすこし説明があるべきだ。
もちろん宮尾原作は映画と全く異なるが、そこに流れる原作の底流は見事に捉えられていて感動的である。ただし女性蔑視という当時の風潮が底辺にあることを女性はどう見るだろうか。
寒椿ゆれる―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)
短編3話構成。
★『猪鍋』
玉島千陰の父千次郎とその後妻の間に子供が出来た。だが、後妻のお駒は、つわりがひどく食欲がない。千陰は36歳独身で玉島家の跡取り問題も浮上中!?そんな折り、風変わりな娘おろくとの縁談話しが…!
★『清姫』
清姫を演じていた若手女形が、ネコ目の娘に斬りつけられた。だが、被害者は見に覚えがなく!
★『寒椿』
伊勢町の内藤屋に盗賊が入った。手引きしたのは下町奉行の大石だというが…。どうやら何者かに陥れられた!?
全体的にとっても面白ろかった。登場人物達が、とても個性的であり魅力的だった。捕り物帳としてはもちろん。おろくと千陰のビミョウな関係が微笑ましかった。おろくの想いと大石の想いが、淡く切なかった