続・大人の流儀
やはり書くべきテーマや、伝えたい動機があると、文に凄みが出るものなのですね。
前作は「締め切りが来たから、何か書かなきゃ」的な文章が多いと感じましたが、今回は違う。
能動的に書いている気がしました。伊集院さんの筆が冴えてます。
作家に限らず、1人の大人として生活していれば、頭に血が上ることもあるし、逆に心が少し温かくなる体験もする。
今だから理解できる、あるいは話してもよいと感じる体験を披露する気にもなる。言わずにはいられない場面にも遭遇する。
そんな日常に対して自分の気持ちがどう動き、何を考えたかを、無駄なく活字にし、読み手に何かを考えさせてくれます。
エッセーは、日々のニュースや、教科書に載っている内容のような、have toの情報を得るためのものではなく、
「お前が言うな」みたいな突っ込みを時には入れながらも、筆者の視座に触れ、読み手が何かを感じることに、読む意義があるのだと理解しています。
伊集院氏の場合はその都度、自分の立ち位置を明確にしているのだから、読み手が「自分のことを棚にあげて」などと感じることがあっても、それはまさに「だからどうした」なのです。
最終章の震災手記には、自身の戸惑いを伝えつつも、その過程で感じた、守られるべき者たちへの途方もない愛情と心配、守るべき者たちの行動に対する失望と苛立ちの感情が読み手にひしひしと伝わってきます。
津波の様子を「映画を見ているよう」と伝えたキャスターの無神経さに憤り、自らは震災の日の夜に仰ぎ見た空について「驚くほど星空があざやかである」と表現する。
どちらも現実感のないことを言わんとしているが、これらの言葉を発した両者の立ち位置にはとんでもない開きがある。
それは分かる。彼のように、無駄のない言葉でスパッと言うのは難しいけれど…。 良書です。
大人の流儀
伊集院静著「大人の流儀」を読了。売れている書です。彼の考える大人の流儀が詰まっています。
人の考えていることを聴くのが好きです。どんなことを考えながら生きているのか。そんなことをあれこれ聴きながらお酒でも飲めれば最高です。
本書は作者の考える男の生き方の書です。あまり説教くさくなく、あまり教養書ぽくもない、生一本のような作品です。作者がこれまでどのようにして生きてきたか、どのように考えてきたが、どのように社会と折り合いをつけてきたか、仲間との交流というものを通じて得た様々な要素から大人とは、すなわち「生きる」こととはどおいうことなのかを、自分の経験から著しています。だからこそしっくりくるし、現実離れしていないからこそ納得もするのです。
伊集院流の生き方がすべてではないとあたりまえですが思っています。でも知っておくには損は無い考え方だと思います。
明日は晴れる(アルバム)
私は沢田研二は大きく分けて二つの顔を持っていると思う。誰にも真似ができない圧倒的な存在感と魅力で霊感さえも漂う紛れもないエンターテイナーの「ジュリー」と、奥さん思いの頑固でグルメな普通のおっさんの「沢田さん」と。
私はあんまり「沢田さん」には興味がない。しかし、エンターテイナーとしての「ジュリー」には本当に心酔・感服してしまう。何という表現力。何という魅惑的な声。何というかっこよさ。こんな人が地上にいて私達を魅了してくれるのは本当に有難いことである。
最近の沢田研二のアルバムは、「ジュリー」よりも「沢田さん」が色濃く出たものになっているように思える。沢田研二の最近のスタンスが、「虚無に飾り立てた昔の自分でなく今の等身大の自分を見て欲しい」と言うこ??なんだろうか。そういうのが好きなファンは大勢いて、それはそれでいいと思う。しかし私は「普通のおっさんの自己満足」じゃなく、まだまだきらびやかに光り輝くロケンロールなジュリーが聞きたい。
で、今回のアルバムである。結論を言うと、これは、本当に良いアルバムだった。沢田研二プロデュースの中で一番か二番目に好きなアルバムだと思う。今回一番うれしかったのは沢田研二の最大(かな?ほかにも一杯素敵な所はあるが、敢えて。)の魅力である美声が如何なく堪能できたことである。曲も全て素晴しく、かっこよく、大人のエンターテイメントとして楽しめるものになっている。
沢田研二はやはり、「自分はエンターテイナー。あんたは観客。骨の髄まで楽しませてやるぜ!」という雰囲気を醸し出して!欲しい。「まあよかったら聞いてよ。こんなおっさんの独り言。」ではアカン。今回のアルバムで本当に久し振りに歌詞カードを手にとって何度も繰り返しながら一緒に歌った。良いアルバムであった。かっこいいジュリーが帰ってきた。こういう方向でいつまでもいつまでも突っ走って欲しい。
千思万考
歴史で活躍した男の躍動感が伝わってくる。
特に信長のくだりはいい、と思った。
パイオニアとしての信長の改革の根幹は既得権益の破壊にあったが、
こうした思想は、信長が幼いころから伊勢湾貿易の中継地に立ち
出船入船を眺めながら外国の文物と情報に常に触れていたから
固定観念を打ち崩したのだという主張にはうなずける。
今日は昨日に影響され、明日は今日の助走による。
平成という時代は昭和に影響され、次の時代の助走となるのだから
我々の責任は重大だと感じた。
初戀(初回) (CD-EXTRA仕様)
とにかく完成度が高い!
1stアルバムもよいのですが、シングルで出た曲以外でそんなに印象に残るものはありませんでした。
しかし、こちらのアルバムは、『花結び』『風の凱歌』等、かなり気に入った曲がたくさんありました。
林明日香さんは今3つのアルバムを出していますが、このアルバムが一番良いと思います。