Buxtehude: Organ Works (Complete)
ディートリヒ・ブクステフーデのオルガン全曲を6枚のCDに収めてあります。演奏は堅実で録音も優れているので、とてもお買い得なセットです
。
Ulrik Spang-Hanssen は3カ国で5台のオルガンを使って演奏しています。ドイツが1台、デンマークが2台、オランダが1台です。それらのオルガンはいずれも重厚な低音の上に硬質な高音が鳴り響き、思わず姿勢を正して聴き入ってしまいます。
この録音で興味深いのは、残り2枚のCDがフランスのオルガンを使って演奏されていることです。フランスのオルガンは伸びやかな低音と明るく軽やかな高音が魅力です。北ドイツの作曲家であるブクステフーデとフランスオルガンの相性は如何に、といぶかしく思いながら聴いてみたのですが、これが素晴らしくマッチしていることに驚きました。特に4枚目のCDの第1曲目、「シャコンヌ」。単純な低音による主題の上に高音部が自由奔放に変奏されて流れ、まさにフランスオルガンでなければ出せない美しさを表現しています。この1曲だけでも、一聴の価値はあります。
Buxtehude: Complete Organ Music
バッハのオルガン曲集を探していて、このCDを見つけました。それまでブクステフーデのことは
ほとんど知らなかったのですが、値段も手頃でしたので購入してしてみました。素晴らしい作品
集でした。ブクステフーデがオルガニストとして活躍したリューベックの「聖マリア教会」オル
ガンを、300年後の同教会のオルガニスト、ワルター・クラフトが演奏しています。
録音は1957年ですが、モノラルではなくステレオ録音です。これはVOX社最初期のステレオ録音
ですが、一部は「マルチチャンネル」録音がなされています。ライナーノートに「a triumph of
the early stereophonic era」と書かれていることから、VOX社としても満足のいく録音だったよ
うです。マスターテープの状態が大変良く(何箇所か音が途切れているところがあり、その部分は
デジタルリマスタリングされているとのこと)、私もこのCDはとても50年以上前の録音とは思え
ませんでした。演奏はどちらかというと淡々と弾かれているのですが、足鍵盤を含め技術的には
申し分なく、教会の残響の良さも相まって聴き終わった後にはすがすがしい気持ちになりました。
ほぼ毎日聴いていますが、飽きることがありません。
音楽の玉手箱~露西亜秘曲集~
有森博は私が特に新譜を待ち望んでいるピアニストの一人である。だけれども2007年11月に発売された2枚(!)のアルバムについては、前もってそのニュースを聴いてなかっただけに、ふらっと入ったCD店の店頭でこれらのアルバムを発見したときの喜びはことさら大きかった。その日、私は競馬で散々負けて、お金の持ち合わせがないところだったのであるが、カードがあれば買えてしまうという現代社会の病巣にあっけなくとりつかれ、即購入してしまった。
さっそく家に帰って聴いてみると、いや、これは良い。もう競馬で負けたことなんかどうでもいい(すいません・・)。有森博のアルバムはその曲目の構成にも彼ならではの卓越したセンスを感じるが、この露西亜秘曲集など実に見事だ。ほとんど知らない作品、中には知らない作曲家もいる。いったいどのようにしてこのように魅力的な作品を見つけるのだろうか?70分を超える収録時間もうれしい。
アルチュニアン、ババジャニアンといったアルメニアの作曲家の作品はなんともオリエンタルなムードだ。その親しみやすいこと。この国にはまだまだ魅力的な作品が埋もれていそうだ。他にもリストのハンガリー狂詩曲はラフマニノフのカデンツァがヴィルトゥオジティを満たす愉悦作だし、ヴィゴードスキーの編曲した「G線上のアリア」の思わぬ美しさにはクラッとくる。また、アレンスキー、グラズノフ、ラフマニノフ、タネーエフの「合作」はショパン・リストらの「ヘクサメロン」の露西亜版といえるもの。聴けるだけでもうれしい。さらにはリャプノフの力作などなど聴き応え万点のすばらしいアルバムである。できれば第2弾を出してほしい、と早くも思ってしまった。
ブクステフーデ:ハープシコード作品集 - ラ・カプリツィオーザ/ト短調組曲 他
2003年にドイツのリュークハイムで録音された、グレン・ウィルソンによる、ディートリヒ・ブクステフーデ(c1637-1707)のハープシコード曲のCDです。収録曲は…
●前奏曲(とフーガ) ト長調、BuxWV.162
●前奏曲とフーガ ト短調、BuxWV.163
●トッカータ ト長調、BuxWV.165
●カンツォネッタ ト長調、BuxWV.171
●コラール・パルティータ《わが愛する神に》、BuxWV.179
●組曲 ト短調、BuxWV.241
●2つの変奏とアリア イ短調、BuxWV.249(この曲は、《アリアと2つの変奏》と表記すべきだと思いますが…)
●ラ・カプリツィオーザ(創作アリアに基づく変奏曲)、BuxWV.250
です。総収録時間は55分19秒です。
この中で、純粋なハープシコード曲は、BuxWV.241・249・250で、残りの曲はもともとオルガン曲です。お薦めは、BuxWV.250です。これは、『ベルガマスカ』に基づいた32の変奏曲です。『ベルガマスカ』とは「レレミミレドシ〜」という、イタリアのベルガモ地方に由来する旋律のことで、第4、5変奏ではっきり耳にすることができます。ブクステフーデ版《ゴルトベルク変奏曲》と言われるだけあって、なるほど変化に富んだ曲です。特に、第27変奏の最後の和音は面白いです。第16変奏だけ音色を変えて演奏しているのは、全曲の中央だからだと思われます。ただ、32も変奏があるにも関わらず、この曲のトラック数はわずか4つしかありません(第1〜8変奏、第9〜16変奏、第17〜24変奏、第25〜32変奏の4つ)。ゆえに、漠然と聴いていると、今が何番目の変奏なのか分からなくなります。折角いい曲なのだから、ここは多少無理をしてでも全ての変奏にトラックを付けて欲しかったです。
ウィルソンは、心から楽しんで演奏しているようで、特にBuxWV.163のラストでは「よくまぁ指がこんなに速く動くなぁ」と感心してしまいます。この人の他の録音も聴いてみたくなりました。持っておいて損はない1枚です。