生と死のバランスのとれたドラマおすすめ度
★★★★★
間違いなく欠点が最も少ないドラマであり、「傑作」という形容詞が相応しい極めて稀なドラマ。
堤監督の作品は『恋愛寫眞』と『愛なんていらねえよ、夏』を観て分析したが映像に工夫を凝らし素晴らしい。それに比べると『セカチュウ』では第一話冒頭の映像がウルルの空撮、そして1987年のサクのヘッドショットが画面の中央に写る。
「?」であり「!」。
私の様に『恋愛寫眞』と『いら夏』しか観てない人間には驚きの構図。堤幸彦はこんな単純な構図の映像を撮るのか?、と驚いた。
しかし、そこは頭のキレる堤、これ以降の場面に伏線を盛り込んでいる。
『セカチュウ』での堤の演出はどれもが素晴らしいが、どのドラマや映画よりも勝っている点は生と死の間にある無限と永遠を完璧に表現した事。
ある物が落ちないし、落ちるはずないのだが、その理由を考えると暗示する事が分かり愕然とした。白血病を携えた死神の力を表してる。重力さえ望みのままに操れる死神!死を完全無欠に表現している。そこまでアキを苛める必要があるのか?、と思った程この演出には衝撃を受けた。
またガラスと電話を死と関連した演出に使うのも秀逸であり、特に1987年と2004年の電話事情まで考慮に入れてる点には唸り声が出た。
死を映像化するのは大変難しい。
白血病の恐怖と苦痛は『永遠の愛を誓って』(安積政子+藤保秀樹著)に詳しいが、この本に倣って写実的に映像化するのは悲惨というよりも悪趣味。
『セカチュウ』では死を簡単な物で象徴し完全に表現する事に成功した。このために死と反対にある生の全て(演出、演技、台詞、音楽等)が活きている。
字数無制限ならいくらでも『セカチュウ』の賛辞を書けるがそうもいかないので最後に一言:
『愛なんていらねえよ、夏』と同じく「精読」耐えられる「硬質」な『セカチュウ』。傑作です。
現役がん患者からの感想おすすめ度
★★★★★
私は2007年春に白血病と同じ血液のがんである「悪性リンパ腫」を発症した。ドラマの廣瀬亜紀と同じように抗がん剤治療を受け、吐き気や痺れと闘い、当然のように全身の毛が抜け落ちた。半年に渡る治療の結果、抗がん剤との相性がよかったのか、悪運が強いのか、現在は寛解(がん細胞の集積が認められない状態)している。
このドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」は2004年の放送時には、実はあまり興味がなかった。世間では話題になっていたので、話の種に1度だけ観た。第10話であった。「見たことの無い女優」の演技が衝撃的だった。神々しいと思った。しかし、当時は白血病を身近に感じられなかったため、DVDを購入してまで観ることもなく年月が過ぎていった。
自分が「がん」になってみて初めて分かることは多い。抗がん剤を点滴した後の吐き気やダルさ、骨の髄が痛む感覚は、がんになる以前に経験したことはなかった。また、治療の回数を重ねていくと精神的にも追い詰められてくる。逃げ出したい自分との闘いになる。治療しながら、あの「見たことの無い女優」を思い出した。
もちろん「見たことの無い女優」が綾瀬はるかさんだということは、既に知っていたが、ドラマを今さらながらに観てみると、廣瀬亜紀を演じている「見たことの無い女優」は、奇跡の演技をしていた。他のどの女優も演じることのできない領域に踏み込んでいる。多くの人々に何度でも涙を流させるのは、この女優さんがある一線を踏み越えているから。
ある一線とは、私たちがん患者でも息をのむほどのリアリズム。演出ではなく演技ね。空港のシーンなどは減量の空腹で、本当にふらふらだったんじゃないかと心配になるほどだ。
当時、ほとんど新人だった綾瀬はるかの「驚演」に触発されて、脇役の俳優陣も最高のパフォーマンスで応えている。仲代達矢は流石だし、手塚理美・三浦友和の夫婦役も素晴らしかった。全ての出演者が好演しているが、キャスティングに注文をつけるとすれば、主役に始めから「山田孝之」ありきはいかがなものか。緒方直人とのバランスも実によくない。
私は、この二人の俳優にだけは最後まで感情移入出来なかった。
演出面では、廣瀬亜紀にCV(中心静脈カテーテル)が見られないのは不満である。がん患者といえばCVというぐらい、一般的なものであるし、勉強不足。
しかしながら、全てのミステイクを菩薩の如き一人の女優が救っている。必見。
人が人を愛するという事・人を想う優しさと辛さを改めて教えてもらいました。おすすめ度
★★★★★
柴咲コウさんのBESTを聴いたら「かたちあるもの」が入っていて
もう初めて観てから4年近く経つのに、時間を巻き戻されてしまいました。
映画版も観ていたし、1度全て見終わっていて、ストーリーも
これからどうなるのかも、解るのに、何故か涙が止まりません。
私と朔の年代が近く、私は高校時代に好きになった妻と結婚をして
今では、あきと同年代の娘が居て、そして少し小さいけど息子もいる
だから、父親の気持ちも朔太郎の気持ちも良く解る、なのに
涙が止まりませんでした。
本当に人を好きになると、とても辛いし、がんばらなければいけないのですよ
その事を、改めて教えてもらう事ができました。
日本のドラマの中では10年に1度出るか出ないかの名作です。
余計な先入観を持たずに感じるままに観て下さい。
上出来
おすすめ度 ★★★★★
とても面白いじゃないですか
。従来の伝統を引き継ぎつつ、バランスがうまくとれてます。
すばらしいものだと感じましたので☆5評価としました。
概要
小説は大ベストセラー、映画も大ヒットを記録した同名作品のTVドラマ版。一組の高校生カップルによって育まれた一途な純愛模様と、恋人の死をプレイ、リバースと悔恨することだけに費やしたその後の17年間を経てもなお、閉ざされ続けたままの主人公の思いとが交錯する形でこのラブストーリーは物語られていく。冒頭、荒涼とした赤土の絶壁に制服姿のサク(山田孝之)がたたずむ場面から圧巻。2004年、大学の病理研究室で働く朔太郎(緒形直人)は、高校時代の恩師である谷田部(松下由樹)から母校が取り壊されるとの手紙をもらう。思い起こされるサクと亜紀(綾瀬はるか)が眩しいほどに惹かれあった1987年の日々。
泣けるドラマが必ずしも優秀とは限らないが、この秀逸な泣けるドラマにおける演出の手厚さはやはり尋常ではないし、せつない思いを噛み締めるかのように歩みを進める脚本も実に丁重だ。サクと亜紀の両親やその友達、そして担任教師といったその周辺の人々にもスポットを当てることで、サクと亜紀の心情を微に入り細をうがってすくい上げており、よりじっくりとした味わいを加えているあたりはテレビドラマならではのよさである。(麻生結一)