百物語〈第4夜〉実録怪談集 (ハルキ・ホラー文庫)
実話怪談本もいろんなバリエーションが楽しめるようになり、
愛好家としては嬉しい限りだ。
私は、刺激と破壊力を楽しめるシリーズも大好きだが、
この平谷美樹氏のシリーズもかなり好きだ。
平谷氏の、見たまま聞いたままを訥々と語っていくスタイルと、
人というか相手(霊を含む場合も多い)に対する優しい目線が
独特の温もりを感じさせてくれるからだ。
平谷氏の体験談以外の、人からの聞き書きの部分に特に言えることだが、
怖いところはちゃんと怖い。その一方で、
語った人がいだく、故人に対する懐かしさや愛情に、
著者が共感を持ち、大事にしている感じが、行間から伝わってくる。
誠実な人柄が滲み出ているような気がして、
読むとなにか暖かいものがジワっと胸に広がるというか。
巻末の鼎談も、著者が怪談に対するときの個人的なスタンスがわかり、
興味深かった。
怪談倶楽部 廃墟 (竹書房文庫)
実録怪異集の著者の、
新作怪談集。
著者とおぼしき「ぼく」が参加する、「怪談倶楽部」で語られた怪異談。
28話収録されているので、どこから読んでもいい。
北東北在住の著者が語る
さびれた漁村、地元の祈祷師、念仏剣舞など、
土と海の匂いのする郷土の風景がやけにリアルで、ぞくぞくする。
怪談倶楽部 怨恨(えんこん) (竹書房文庫)
著者による紙上怪談会の第2段。
今回も、リアルに怖い。
実際、本当に怪談会をしても、なかなかこれほどのレベルの話が
集まることはないだろう。
著者が厳選し、著者の筆で語り直すことで
現実よりもっと、リアルに
怖さが実感としてせまってくる。
さらに、
怪異そのものが持つ怖さだけでなく、
人間の底なしの深みが
覗き見えるような怖さが、ぞくぞくと背中を這い上ってくる。
義経になった男(三)義経北行 (ハルキ文庫 ひ 7-5 時代小説文庫)
義経の影武者となった笑氏の青年、沙棗を主人公にした歴史長編モノの第三巻。頼朝に疎んじられ、追われる身となった義経は北へ、奥州へと逃げるのだが、相変わらず正気を失った状態。そんな中で頼朝は...
物語の大転換を迎えるこの第三巻。いよいよ義経と彼をかくまう奥州討伐に乗り出す頼朝。そんな中で、正気を取り戻した義経は、自分がしたことの重大さに気づき、腹を切る。義経を失った、彼の影武者である沙棗は、義経として生きることを決意し、奥州藤原氏の面々は、奥州の民を守るため、滅んでいくことを選択するのだった...
物語は、義経の悲劇から、さらには奥州の存亡の危機へと展開する。奥州制覇の欲望にまみれながらも、義経の影に怯える頼朝とこの世の浄土ともいうべき奥州を、そしてそこに住む民の平穏な生活を守るために、知略を尽くして、いさぎよく滅びようとする奥州藤原氏の対比が見事。彼らの生き様、死に様がいきいきと描写されている。
百物語〈第8夜〉―実録怪談集 (ハルキ・ホラー文庫)
百物語、第八夜を、
少しずつ夏の間涼しくなりながら読もうと思ったのに、
一気に読んでしまった…。
実話しか収録しない、
不可解な出来事をあえて解説せず
事実そのままで載せるという著者のスタンスは第一夜から通して同じ。
けれど
「怪異」のバラエティが広がってきたのが、いい。
単に怖い話ではなく、
しんみりする話、怖いのにクスリと笑ってしまう話、無情な話などなど…。
そして、今回一番のおすすめは、
一番最後の話。
末期のガンと診断された女性が出会った運命の人は…。
号泣必須。
…その後のいきさつに進展があったらぜひ、
次巻以降に載せてほしいと希望します。