モーツァルト:ピアノ協奏曲第25&27番
グルダといえば何か奇抜なことをしてくるのでは?と思われがちだが、このCDでは逆に模範的な演奏である。
ベーゼンドルファーのピアノ、ヴィーン・フィル、そしてムジークフェライン大ホールの響きが一体となっていて、とても美しい音が聞ける録音。
特に雄大な25番は緊張感と美しさが絶品。祝祭的な輝きが最大の特長とされるヴィーン古典派きっての名作を好演している。この演奏を聴くと他の演奏者による25番が色あせて聞こえる。KV.503はヴィーン時代にモーツァルトが作曲したピアノ協奏曲の中で唯一再演されたことが判明している作品で、当時の聴衆の好みが伺えます。
27番は作品の持つ独特の寂寥感が迫ってくる。ヤゲウォ大学図書館に所蔵されている27番の有名な自筆譜(精巧なレプリカが販売されています)は大変立派な装丁がほどこされ、いかに大切にされてきた作品なのかが伺われる状態だが、この演奏は作品に対する愛情と尊敬が伝わってくる。モーツァルトは若死だが、この演奏を聴くと死ぬべき時に死んだのか、と思えてくる。
古楽器で聞くモーツァルトは確かに面白いが、ピアノという楽器の一層の改良発展を願っていた作曲者の願いを叶えた演奏とはこのような演奏か、と思わずにはいられない。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」/ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」
ベートーベンのコンチェルトの中でもとりわけオーケストラが問題となる作品だけに、聴き込んでいるうちにホルスト=シュタインの指揮がもうちょっとかな、と思うようになってきた。どこが悪いということではないので、私と相性が悪いというだけかもしれませんが。
しかし、文句をつけてから言うのもなんですが、是非聴くべきレコードだと思います。
モーツァルト : ピアノ協奏曲第23番&第26番
モーツァルトのピアノ協奏曲の中で、とりわけ有名な23番と26番を収めた1枚。
この2曲に共通していえることは、グルダの奏でるピアノの音色に透明感があり、その音色が、モーツァルトらしい、のびやかで美しい音楽を作りあげていることである。
もう1つ印象的だったのが、オケのみで演奏される部分で、グルダのピアノがかすかに鳴り響いていたことだ。まるで、「自分も、オーケストラの一員」といわんばかりである。これは、他のピアニストにはみられなかった特徴だろう。
23番、26番とも、わたしのお気に入りは、第3楽章。どちらも、明るく軽快なロンド楽章だが、グルダのピアノが、オーケストラと楽しげに戯れているようで、なんともほほえましくて、チャーミングである。
それと、グルダの演奏を支えるアーノンクール&コンセルトヘボウのコンビだが、トランペットとティンパニが入る26番は、いつもの派手なオーケストレーションながら、決していやみにはならない。
23番も、落ち着いたオーケストレーションで、グルダとともに、美しい音楽を作り出している。
とにかく、すてきな演奏である。星5つあげちゃいまーす!
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20&21番
長年モーツァルトが好きではなかった私が、初めてモーツァルトの魅力に気づいた、そんな1枚。
ピアノ協奏曲20番、21番のオススメを探している人はもちろん、
「モーツァルトはいまいち好きじゃない」という人にも、ぜひ聴いてもらいたい録音です。
グルダの演奏は一音一音が瑞々しく、まるで今そこで音楽が生み出されているかのようです。
軽妙洒脱で天国的に美しく、底知れぬ深い憂いを含みながら楽天的、
緊迫感がありながら開放的で息苦しくなりすぎない、
すべてを兼ね備えたまさに「理想的なモーツァルト」。
空前絶後、稀代の名演といえましょう。
グルダに師事していたアルゲリッチが、
「私は彼のようなすばらしい演奏はできない」というのもうなずけます。
解釈は極めて正統的で、その分グルダらしい遊び心はかなり抑えられており、
そこがファンにとっては物足りないかもしれませんが、だからこそ万人にオススメできる演奏だと思います。
録音も硬質なクリスタルのようなピアノの音色と
ウィーンフィルのやわらかな響きをよく捉えており、
音が発せられた瞬間からその余韻に至るまで、演奏時の空気感をよく伝えています。
(今回はOIBPリマスタリングに加え、新たにルビジウム・カッティングが施されているそうです)
モーツァルト・フォー・ザ・ピープル [DVD]
モーツァルトのソナタなら、ポンス、ラローチャ、ピリス、あるいはバレンボイム等とお思いの方。確かに、優等生的、正統派ばかりでしょう。が、グルダにかかれば、モーツァルトの息遣いが聞こえる。人間性溢れるグルダのひたむきな演奏、テクニックにも舌を巻かざるを得ないだろう。こんなにも、慈愛と格調、喜びと品位に満ちたモーツァルトを発見でき、しかも良質なライブ画面・音声で聞けるとは!!ベタ誉め過ぎるかもしれませんが、来日公演が少なかったがゆえに、日本では今一つの評価のグルダを再発見していただくためには、聞いて損はしない1枚。亡きグルダをしのぶ、マニアならもちろん、太鼓判の必聴版です。