ハルカ・エイティ (文春文庫)
大正に生まれ、激動の時代を明るく生きた、ある女性の物語。
主人公・ハルカのモデルは著者の実の伯母さまだそうです。つまり、第一章に出てくるハルカの姪の作家・秋子さんは著者自身ということ。
この時代に女性が自分らしく生きることは困難でしょう。
今を生きる私達と、この時代を生きたハルカ達の生き方は違うけれど、女性たちが抱くときめきや憧れは今も昔も根本的には変わらない。
問題は時代がそれを許してくれるかどうか。
けど、そんな時代のなかでもハルカはもちろん、
学生時代の友人たちも何とか自分で人生を切り開いたのだから素晴らしい女性たちだと言いたい。
うーん。でも、納得できない部分も多い。
ハルカは確かにポジティブで天真爛漫な女性だけど、この女性が80代になった時に、ああいうおばあちゃんになるというのが疑問。
なんだか描かれていない部分に素敵なおばあちゃんになれる素が隠されていたような・・・。
素敵に年を取るために、ハルカさんにヒントをもらいたかった私にしてみれば少々ガッカリ。
物語はこんな一文で締めくくられる。
「ああ、夏の終わりの夕暮れは、なんや、ロマンチックやなぁ。」
ここにハルカの幸せがすべてつまってますよね。
ああ、懐かしの少女漫画 (講談社文庫)
まず口絵に驚愕。著者本人所有のなかよしなどの付録写真。40年以上前のものがすんごくキレイに保存してある!なんでも鑑定団に出してほしい!実物見たい! エッセイそのものは確かに知っている漫画がほとんどなかった(笑)。けどカオルコ少女のすごすぎる記憶力のおかげで、読んだ気になるし、私は合間のコラムに大爆笑! なにも考えずに笑いたいときに強くオススメします。 しかし、五歳のときのことを、こんなに覚えているなんて、姫野カオルコの脳みそを分解してみたいです。
ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)
姫野カオルコによる直木賞候補にもなった恋愛小説。
正しくは「恋愛群像劇」とも言える。
舞台は人口4万人の町。
中学生の隼子と教師の河村。
そしてそれを取り巻く実に多くの人間が織り成すストーリー。
本作最大の魅力はその数多い登場人物の個性だろう。
思春期特有の微妙な心理の複雑さや陰湿さが、実に細かく、丁寧に描かれている。
生き生きと、伸び伸びと、時に鬱々と。
しかし彼ら脇役の個性が主人公二人を損なう事は決してない。
緻密な脇役というディティールを丁寧に確実に積み上げることによって、
むしろより主人公を引き立て、且つストーリーの重みと厚みを増す役割を見事に果たしている。
ラストが爽快な恋愛小説の傑作。